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業績情報から読み取るインバウンド業界動向(百貨店業界編)
2018.05.22

inbound insightでは今後インバウンドに関連する業界の業績情報を分析し、読者の皆様に役立つ情報を発信して参ります。
第一弾となる今回はインバウンドと切っても切れない業界である「百貨店業界」の業績を元にして、最新のインバウンド業界の最新動向を分析します。

 

好調なインバウンド向け売上

国内の多くの百貨店が加盟する日本百貨店協会(http://www.depart.or.jp/)は、毎月「全国百貨店売上高概況」として、百貨店業界の売上の状況を公表しています。

 

4月に発表された「全国百貨店売上高概況」によると3月の月次売上高は5,202億円となり前年同期比でほぼ横ばいとなりました。 

全体の売上は横ばいですが、花見客を中心とした訪日需要の盛り上がりやリピーターの増加で、インバウンド関連売上は、前年比+48.1%増の売上高290億円となり、非常に好調でした。

下のチャートに有るように、インバウンド関連売上高は順調に推移しており、3月のインバウンド向けの月次売上高は過去最高を記録しています。

 

百貨店のインバウンド向け売上
百貨店売上高推移(訪日外国人のみ)

 

 

 

インバウンド需要は大都市集中?西高東低?

大都市圏の百貨店の月次売上高は、前年比+1%(8ヶ月連続のプラス)で好調な一方で、地方の百貨店は前年比-2%(11ヶ月連続のマイナス)となり、大都市と地方で2極化しつつ有ります。地方への訪日外国人の訪問数は増えているものの、買物などの消費はあまり恩恵を受けていない可能性があります。

 

また、大都市間の比較では、大阪地区が前年同期比で9.1%となったのに対し、東京は同0.1%増にとどまり、「西高東低」となっているようです。これはリピーター増加に伴い、既に東京を訪問した訪日外国人が2回目以降の訪問地として、大阪エリアを選択していることも一因と考えられます。また、関西国際空港へ乗り入れるLCC便の数も増加なども要因だと推定されます。

 

百貨店の売上高比較 
地域ごとの売上/前年同期比

 

大手百貨店の概況

ここでは大手百貨店の業績情報を確認し、その中で、訪日外国人がどのくらい影響しているのかを紐解きます。

 

結論からいいますと、インバウンド向けの売上はどの企業も好調であり、彼らがまだまだ百貨店の業績を下支えしているようです。

ただ、上記の月次データも示しているように、百貨店間でも「西高東低」が顕著となっています。例えば、大阪地区に多く店舗を持つH2Oリテイリングが好調な一方で、関東に多くの店舗を持つそごう・西武(セブン&アイ傘下)は低調となっています。また、店舗間でも大阪エリアの店舗が東京エリアの店舗よりも好調であるとコメントする企業も複数いました。

 

 

J.フロント
リテイリング
高島屋 三越伊勢丹 セブン&アイ

H2O

事業名 百貨店事業 国内百貨店事業 百貨店事業 百貨店事業 百貨店事業
前期売上高
2,743億円
(前年比+2%)
7,786億円
(前年比+3%)
1.1兆円
(前年比-0.6%)
6,578億円
(前年比-10%)
4,462億円
(前年比+4%)
うちインバウンド
関連売上高
479億円
(前年比+63%)
487億円
(前年比+42%)
非開示
非開示
非開示
今期売上高
2,832億円
(前年比+3%)
7,880億円
(前年比+1%)
1.1兆円
(前年比±0%)
6,150億円
(前年比-7%)
4,417億円
(前年比-1%)
うちインバウンド
関連売上高
550億円
(前年比+15%)
560億円
(前年比+15%)
非開示
非開示
非開示

 

J.フロントリテイリング(傘下に大丸松坂屋)

■決算ポイント
・2018年2月期の百貨店事業は売上2,743億円、営業利益が266億円となり、売上高・営業利益共に増収増益(それぞれ前年比+2.3%、前年比+20%)となった
改装効果や販促強化によって、訪日外国人や富裕層消費が好調であったことが一因
大丸松坂屋百貨店では訪日外国人に強い旗艦店舗の改装やモバイル決済対応等が奏功
・訪日外国人向けの売上は479億円となり、訪日外国人による「爆買い」が注目を浴びたの年の1.4倍となっている
・特に大阪の心斎橋店・札幌店・東京店好調とのこと

 

■今期見通し
・2018年度は百貨店事業/不動産事業が好調を維持し、増収となる見込み
訪日外国人向けの売上は550億円程度(前年比+15%)を見込む
訪日外国人を視野に入れたモバイル決済・SNS活用などのICT戦略を取る方針とのこと

 

参考:JフロントリテイリングIRページ

 

高島屋

■決算ポイント
・2018年2月期の国内百貨店事業は売上7,786億円、営業利益が136億円となり、売上高・営業利益共に増収増益(それぞれ前年比+2%、前年比+26.%)となった
訪日外国人関連の売上は487億円となり前年比で+41.6%となり、好調であったことも一因

 

■今期見通し

・2018年度は投資などにより減益になる見込みであるが、増収となる見込み
訪日外国人からの需要を確実に取り込み方針であり、訪日外国人向け売上は560億円(前年比+15%)を見込む

 

参考:高島屋IRページ

 

三越伊勢丹HD

■決算ポイント

・2018年3月期の百貨店事業は売上高1.1兆円、営業利益145億円となり、減収増益(それぞれ前年比−0.6%、+31%)となった

地域店におけるインバウンド向け売上の伸長率が基幹3店である伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店の伸長率を
上回るなど、訪日外国人の増加による売上は好調に推移した

 

■今期見通し

・2019年3月期の百貨店事業は売上高1.1兆円、営業利益175億円となり、売上横ばい・増益となる見込み

 

参考:三越伊勢丹HD IRページ

 

セブン&アイHD(傘下にそごう・西武)

■決算ポイント
・2018年2月期の百貨店事業は売上6,578億円、営業利益が53億円となり、減収増益(それぞれ前年比−10%、前年比+87%)となった
訪日外国人向け売上の多い、西武池袋本店・西武渋谷店では多言語対応スタッフの増員・フリーWiFiの準備などインフラ環境を整備

 

■今期見通し

・2019年2月期の百貨店事業は売上高6,150億円、営業利益57億円となり、減収増益となる見込み

 

参考:セブン&アイHD IRページ

 

H2Oリテイリング(傘下に阪急百貨店・阪神百貨店など)

■決算ポイント
・2018年3月期の百貨店事業は売上4,462億円、営業利益が180億円となり、増収増益(それぞれ前年比+4%、前年比+13%)となった
インバウンド消費がさらに活発化した影響もあり、好調に推移

 

■今期見通し

・2019年3月期の百貨店事業は売上高4,417億円、営業利益140億円となり、減収減益となる見込み

訪日外国人向け売上が好調なうちに、地元客をターゲットとした店舗の改装などの投資を行う方針

 

参考:H2OリテイリングIRページ

 

インバウンド業界動向まとめ(百貨店業界)

百貨店の月次売上情報や大手百貨店の決算情報からわかる点は下記です。

・訪日外国人による百貨店における消費は引き続き好調であり、まだ「爆買い」は終わってはいない

・大手百貨店では、訪日外国人による売上の貢献は大きく、業績を下支えしている

・訪日外国人による、都市圏での消費額は多いものの、地方はまだまだ低調である(=伸びしろが有る)

・大都市圏間でも大阪地区の方が東京地区よりも好調であり、「西高東低」となっている

・引き続き訪日外国人は重要なターゲットとしており、設備投資・改装などにも積極的に動いている企業もある

 

 

 

inbound insightでは今後も皆様に有用な情報を積極的に発信してまいります。

 

 

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<本記事に関するお問い合わせ>
株式会社ナイトレイ
セールス&マーケティング 
info@nightley.jp

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