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業績情報から読み取るインバウンド業界動向(ドン・キホーテHD編)
2018.05.30

inbound insightでは今後インバウンドに関連する業界の業績情報を分析し、読者の皆様に役立つ情報を発信して参ります。
第ニ弾は訪日外国人から根強い人気を集めるドン・キホーテHDの業績を元にして、最新のインバウンド業界の動向を分析します。

 

訪日外国人に絶大な人気を誇るドン・キホーテ

ドン・キホーテは様々な商品を安い価格で提供している、誰もが知るディスカウントストア大手です。昨今、日本人のみならず、多くの訪日外国人をひきつけ、訪日外国人の訪問地として定番となりつつあります。ドン・キホーテによると月間の訪日外国人数は40万人を超え、5万人程度であった2014年から比較すると、わずか4年ほどで8倍以上に成長しているとのことです。筆者が、ドン・キホーテを訪問して、毎度訪日外国人の多さを感じるのも頷けます。

 

ドン・キホーテの売上推移

ここではまずドン・キホーテの業績を確認しましょう。

ドン・キホーテの2017年6月期の売上高は8,288億円、前年比で+9%となり、1号店の開店以来28期連続の増収増益となり、過去最高を更新しました。また、今期(2018年6月期)の第3四半期もインバウンド消費の拡大などの恩恵を受け、累計で前年同期比+13%となっています。2018年6月期の通期予想も上方修正し、前年比で+13%で着地する見込みとしており、連続増収増益記録を更新するのは間違いなさそうです。

 

 

ドンキ売上高推移
ドン・キホーテHD売上高推移

 

インバウンド向け売上

ドン・キホーテの決算資料には「インバウンドの状況」というコンテンツが有り、訪日外国人の消費動向を知るのに、非常に役に立ちます。

今回は2018年5月に発表された決算資料を参考にして、訪日外国人の動向を紐解きます。

 

訪日外国人売上高推移
訪日外国人売上高と品目比率推移(四半期)

 

ドン・キホーテのインバウンド向け売上(=免税売上)も順調に拡大しており、全体の売上に占める割合も10%近くにまで拡大しています。客単価は2014年頃には20,000円近くまで上昇した時期もありましたが、現在はピーク時からは減少し、10,000円台前半で安定して推移しています。一方で客数は大幅に伸びており、2018年に入ってからは、月間40万人以上訪れており、この客数の伸びにより、インバウンド向け売上高が増えています。ドン・キホーテによると、新免税制度が開始して以来、売上高は42ヶ月連続で前年比で上回って推移しているとのことです。

 

ドン・キホーテ月次免税売上
月次免税売上推移

 

客単価が2015年頃と比較して、10,000円台まで減少した理由としては、高価な製品から、日用雑貨品へと需要が移行したことが有ります。実際、ドン・キホーテの品目別売上では、特に化粧品や医薬品が二大稼ぎ頭となり、日用雑貨品が免税売上の半分以上を占めるまでになっています。

これには訪日外国人の間でのクチコミによる拡販とリピーター客の増加が寄与しているようです。

 

国籍別の客数では、韓国人が多く、2016年度の第1四半期以降、中国人を抜きトップとなっています。次いで、台湾人、タイ人となり、アジア系の訪日外国人が大半を占めています。また、韓国人と中国人を合わせると訪日外国人の総客数の70%以上となり、彼らは非常に重要な顧客であることがわかります。

ドン・キホーテ国籍別客数
外国人の客数推移

 

店舗別特徴

免税売上高構成比では大阪の3店舗がトップ3となり、道頓堀の2店舗に関しては60%超える免税売上高比率となっています。この3店舗は道頓堀周辺数百メートルのなかに位置しており、道頓堀周辺の訪日外国人の多さを物語っています。

道頓堀御堂筋店に関しては、道頓堀店から100m程度しか離れておらず、道頓堀店の訪日外国人があまりにも多くなったために、受け皿として出店したといわれています。同店舗はインバウンド強化店舗として、訪日外国人を主なターゲットとした品揃えをしています。

ドンキの免税売上高比率とトップ3の店舗位置
免税売上高比率とトップ3の店舗位置

 

国籍別客単価

国籍別客単価を比較すると、中国人の客単価が日本人の6.2倍となっており、15,000円を超えています。客数では韓国人がトップですが、中国人の客単価が韓国人の倍以上であります。そのため、国別免税売上高では中国人が42.8%となり、トップとなっており、中国人の購買力が引き続き際立つ結果となっています。

 

ドンキ国籍別客単価
国籍別客単価

 

 

訪日外国人を引きつける6つの理由

ではなぜ、ドン・キホーテは、ここまで訪日外国人を惹きつけるのでしょうか。下記6つの側面から解説します。

 

訪日外国人向け決済導入/免税対応

まず、第一にいち早く訪日外国人向け決済サービスを導入したことが挙げられます。競合に先駆けて中国人の多くが利用する銀聯カード決済に対応しました。また、流通量の多い7つの外貨(米ドル・ユーロ・人民元・韓国ウォン・香港ドル・タイバーツ)での決済にも対応しています。更に、訪日外国人の多い店舗において中国最大規模のオンライン決済サービス「Alipay」にも対応しています。また、当然のことながら、免税サービスもほぼ全店舗で実施しています。

 

ドン・キホーテは免税制度(会社HPより)
全品免税対応(会社HPより)

 

多言語対応

訪日外国人の多い店舗では「ウェルカムデスク(外国人専用カウンター)」を設置し、多言語対応したスタッフが免税手続きや通訳サービスなど、訪日外国人の買物をサポートしています。また、訪日前に商品を予約できる「ウェルカム予約サイト」や購入品を空港まで配送するサービスも提供し、訪日外国人の痒いところに手が届くようなサービスを提供しています。

 

街ぐるみのプロモーション

訪日外国人向けに「ようこそ!マップ」を無料配布し、ドン・キホーテの店舗の周辺地域の観光スポット、ホテル、飲食店情報を掲載し、店舗周辺エリア全体でインバウンド需要を獲得しようとしています。「ようこそ!マップ」に加えて、提携店で使える外国人向けポイントカード「ようこそ!ジャパン・パス」も発行しています。

「ようこそ!マップ」(左)と「ようこそ!ジャパンパス」
「ようこそ!マップ」(左)と「ようこそ!ジャパンパス」(右)(会社HPより)

 

訪日外国人を意識した品揃え

訪日外国人を意識した品揃えも訪日外国人を喜ばせる要素となっています。例えば、「抹茶のお菓子」の品揃えを強化し、店舗の一箇所に集約したり、日本の全国のお土産のお菓子を取り扱ったりと、訪日外国人のお土産探しの救世主となっています。また、人気の医薬品もドラッグストアと遜色ない品数を揃えており、ドン・キホーテに来れば訪日外国人の買いたいものが全て揃いそうな勢いです。

 

訪日外国人を喜ばす設備

ドン・キホーテは、訪日外国人に配慮した事前登録不要の無料WiFi「Donki Free WiFi」を提供しており、利用規約も多言語対応させています。また、店舗によっては、コインロッカーも準備し、訪日外国人の手ぶら旅行をサポートしています。また、なんといっても、様々商品が積み上げられ、色鮮やかなポップで飾られた店舗のアミューズメント性も訪日外国人を喜ばしている要素の一つとも言えます。

 

営業時間

夜遅くまで、または店舗によっては24時間営業している店舗も多くあり、訪日外国人の夜の観光をサポートしています。訪日外国人は夜遅くまで営業している店舗や飲食店を求めており、そのニーズに沿った形となっているようです。

donki_night_sales
売上は夜に増える(会社資料より)

 

ドン・キホーテはインバウンドの追い風を受け、今後も売上高を伸ばしていくことが予想されます。ドン・キホーテの訪日外国人対策は、多くの小売店の経営に置いて、お手本となる要素がたくさんあるのではないでしょうか。

 

inbound insightでは今後も皆様に有用な情報を積極的に発信してまいります。

 

 

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