神奈川県は、首都にして日本経済の中心である東京都の隣に位置する都道府県です。そして、箱根や横浜などの多くの観光スポットもあり、多くの外国人観光客が訪れる場所です。
本記事では、そんな神奈川県に訪れる訪日外国人の特徴について、オープンデータ、ビッグデータを用いた観光動態調査結果から考察していきます。
はじめに
観光動態調査の全体像
インバウンド対策は、滞在・周遊による人の動き、消費動向を定量的に押さえ、定性的に旅行行動を把握し実施する事が大切です。旅行行動は大きく「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」の3つに分けられ、それぞれのフェーズに適したデータを分析し現状把握を行う事で、精度の高い施策と効果検証につなげる事ができます。
概要
神奈川県に訪れる訪日外国人の特徴まとめ
●旅マエ
■旅行手配を旅行の1~2カ月前に行う人が多い
■店頭から旅行に申し込む人の割合が高い
■旅行目的はビジネス目的の割合が高く、東京と似た傾向が見られる
●旅ナカ
■昼間の滞在者数が夜間の滞在者数よりも多い
■4月や10月に多少の訪問者数の増加が見られるもそこまで大きな違いは見られない
■中国、台湾、アメリカ、韓国の4か国が昼夜ともに高い割合をしめしている。
■箱根町、横浜市中区、横浜市西区という順に市区町村の訪問者が多い
■神奈川県の消費総額は全国で8位であり、隣接する東京都の約3分の1である
※本記事では「旅マエ」「旅ナカ」に焦点を絞り分析を行なっています
使用データについて
モバイル空間統計とは、ドコモの携帯電話ネットワークの仕組みを使用して作成される人口統計情報。携帯電話ネットワークは電話やメールなどをいつでもどこでもご利用いただけるように、各基地局のエリア毎に所在する携帯電話を周期的に把握しているサービス。いつ・どんな人が・どこから・どこへを7,600万(訪日外国人:750万)サンプルから分析可能。
※当レポートでは、主要17ヶ国(大韓民国、中華人民共和国、台湾、香港、ベトナム、タイ、シンガポール、マレーシア、フィリピン、インド、英国、フランス、ドイツ、ロシア、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア)の訪日外国人の滞在データを使用
都道府県単位で、訪日外国人(地域別・国籍別)の部門別カード消費額や取引件数、取引単価をマップやグラフに表示して比較したり、消費額の推移をグラフに表示することで、自地域における訪日外国人の消費額や消費単価を把握可能。
訪日外国人旅行者の消費動向を明らかにし、外国人観光客誘致に関する施策の企画立案、評価等のための基礎資料を得ることを目的とした観光庁が実施している調査です。 本調査は、目的に応じて以下の3つの調査を四半期毎に実施しています。 A全国調査:日本全体での訪日外国人の客層や旅行内容、消費実態を明らかにする。 B1地域調査:訪問地(都道府県)毎に、訪日外国人の客層や旅行内容、消費実態を明らかにする。 B2クルーズ調査:船舶観光上陸許可を得た訪日外国人の客層や旅行内容、消費実態を明らかにする。
Twitterや一部インスタグラムのデータを元にナイトレイが国籍判定や位置情報解析を行ったデータ(2016年9月20日~2017年8月31日のデータを集計)。SNS解析データを基にして、訪日外国人のクチコミ、周遊動向、人気施設等の把握が可能。
神奈川県の訪日外国人旅マエ動向
旅行手配の時期
旅行手配の時期は1~2カ月前が最多の割合を示しているも、全国平均を下回る値を示している。
また、旅行の3か月以上前が全国平均を上回っている。
観光庁「訪日外国人消費動向調査」2017年
旅行申込方法
店頭で申し込んだ割合が全国平均よりも高く、ウェブサイトから申し込んだ割合が低くなっている。
旅行手配方法
個別手配の割合が全国平均よりも高くなっている。
出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査」2017年
旅行目的
観光・レジャーが最大の割合を示す一方で、その値は全国平均よりも低くなっている。
かわりにビジネス目的や親族・知人訪問などが高くなっている。この傾向は東京都にも似た傾向が見られる。
東京都のインバウンド観光情報については「消費総額全国1位!東京都のインバウンド対策状況」を参照してください。
出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査」2017年
神奈川県の訪日外国人旅ナカ動向
神奈川県の滞在状況
●年別滞在者数推移
昼間の滞在者数が夜間の滞在者数よりも多いことが伺える。
また、昼間・夜間ともに滞在者数は毎年増加傾向にある。
出典:RESAS「モバイル空間統計」※2015年1月から2017年11月までのデータを集計
●月別滞在者数推移
昼間と夜間を比較しても、月次の推移にほとんど違いは見られない。
4月や10月に増加が見られるものの、年間を通して極端な違いは見られない。また、年々訪問者数が増えていることも伺える。
出典:RESAS「モバイル空間統計」※2015年1月から2017年11月までのデータを集計
●訪日回数
1回目の割合が全国平均よりも上回っており、わずかにではあるが20回以上も全国平均よりも高くなっている。
出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査」2017年
●国籍別滞在者割合
中国、台湾、アメリカ、韓国の4か国が昼夜ともに高い割合をしめしている。特に中国人は高い割合を示し、昼夜ともに唯一20%を越している国籍である。
一方で昼間の滞在者数における台湾人の割合は10.8%を占め、3位に位置しているが、夜間にはその割合が8.1%まで下がり、4位に下がっていることは特徴的であり、この事から台湾人は昼間に神奈川県に訪問し、夜間に他の都道府県で宿泊していることが伺える。
台湾人のインバウンド観光情報については「リピート率が高い!データから分かる訪日台湾人の特徴」を参照してください。
出典:RESAS「モバイル空間統計」※2016年12月から2017年11月までのデータを集計
神奈川県で訪日外国人の滞在者数が多い市区町村トップ3
●1位:箱根町
芦ノ湖や温泉など、有名な観光・レジャースポットが多く存在する箱根町が1位となっている。
また、昼間の滞在者が夜間の滞在者数と比較して約2倍存在することや冬に観光客数が大きく増加している事、4月の急激な上昇は特徴的である。
出典:RESAS「モバイル空間統計」※2016年12月から2017年11月までのデータを集計
●2位:横浜市中区
ランドマークタワーや横浜中華街、山下公園などの多くの観光施設・スポットが存在する横浜市中区が2位になっている。
また、昼夜を通して人数に極端な違いは見られないことや10月の伸びは特徴的である。
出典:RESAS「モバイル空間統計」※2016年12月から2017年11月までのデータを集計
●3位:横浜市西区
横浜駅や馬車道などが所在する横浜市西区が3位に所在している。
横浜市中区と同様に10月の伸びが著しいが、一方で昼夜の差が同じ横浜市であるにも関わらず開いていることが特徴的である。
出典:RESAS「モバイル空間統計」※2016年12月から2017年11月までのデータを集計
●神奈川県の市区町村別滞在者数ランキング
数値にしてみると箱根町と横浜市中区の滞在者数合計にほとんど違いがないことがわかる。また、夜間の滞在に限定すれば2位・3位である横浜市中区と西区が箱根町を上回っていることが伺える。加えて、3位である横浜市西区と4位である鎌倉市に倍以上の違いがあることも伺える。
出典:RESAS「モバイル空間統計」※2016年12月から2017年11月までのデータを集計
●神奈川県の人気施設ランキング
ナイトレイが独自に解析するSNSデータを元に作成した⼈気施設ランキングです。
1〜10位にランクインしている施設は、上位の市区町村、特にトップ3にあてはまる市区町村に集中していることが伺えます。
だからこそ、上位市区町村に位置しない「よみうりランド」の存在は特徴的です。
「inbound insight SNS解析プラン」では人気施設ランキングだけでなく、訪日外国人の訪問スポット、クチコミ、周遊ルートの可視化が可能です。
順位 | 施設名 | 市区町村 |
---|---|---|
1位 |
大桶谷 |
足利下郡 箱根町 |
2位 |
鎌倉大仏 |
鎌倉市 |
3位 | 横浜赤レンガ倉庫 | 横浜市 中区 |
4位 |
山下公園 |
横浜市 中区 |
5位 | 彫刻の森美術館 | 足利下郡 箱根町 |
6位 | よみうりランド | 川崎市 多摩区 |
7位 | 横浜駅 | 横浜市 西区 |
8位 | 箱根神社 | 足利下郡 箱根町 |
9位 | 新横浜駅 | 横浜市 港北区 |
10位 | 横浜ロイヤルパークホテル | 横浜市 西区 |
出典:inbound insight「SNS解析プラン」 集計対象期間:2018年11月03日 ~ 2018年12月02日
神奈川県の消費状況
●神奈川県の総消費額、都道府県ランキング
神奈川県の消費は全国で8位であり、隣接している東京都と消費を比較すると約3分の1になる。
また、経年で増加率を見ると徐々に穏やかになり、2017年は2016年の値を下回る可能性がある。
出典:RESAS「ビザ・ワールドワイド・ジャパン株式会社のカードデータを再編加工」※ランキングは2016年10月から2017年9月までのデータを集計
購入店舗
コンビニエンスストアや百貨店、空港の免税店、ドラッグストアが高い割合を示しているが、いずれも全国平均を下回っている。その他の項目においても平均を下回っており、特にドラッグストアに関しては15%下回っている。一方でスーパーマーケットやファッションショップや家電量販店、観光地の土産店などが全国平均を上回っている。
出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査」2017年
利用金融機関
ほとんどの利用金融機関が全国平均を上回るも、特に「ATM」項目の高さが特徴的である。
出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査」2017年
支払い・決済方法
現金とクレジットカードが高い割合を示している。
また、クレジットカードについては全国平均を上回る値を示している。
出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査」2017年
世帯年収
全国平均とほとんど変わらないものの「1000万円以上2000万円未満」「2000万円以上3000万円未満」の値が多く、比較的に高所得層が訪日していると考えられる。
出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査」2017年