埼玉県は首都圏からのアクセスが良く、川越や秩父などの観光エリアもあり、多くの外国人観光客が訪れる場所です。
本記事では、そんな埼玉県に訪れる訪日外国人の特徴について、オープンデータ、ビッグデータを用いた観光動態調査結果から考察していきます。
はじめに
観光動態調査の全体像
インバウンド対策は、滞在・周遊による人の動き、消費動向を定量的に押さえ、定性的に旅行行動を把握し実施する事が大切です。旅行行動は大きく「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」の3つに分けられ、それぞれのフェーズに適したデータを分析し現状把握を行う事で、精度の高い施策と効果検証につなげる事ができます。
・情報収集手段
・旅行申し込み方法(個人or団体)
・訪日回数 …etc
・滞在調査
・周遊調査
・消費調査
・旅行行動調査 …etc
・満足度(内容別)
・困りごと
・リピート意向
・地域の魅力な点 …etc
概要
埼玉県に訪れる訪日外国人の特徴まとめ
●旅マエ
■全国平均と比較すると、旅行直前に旅行手配する人が多い
■9割の人が個別に旅行を手配
■全国平均と比較すると、観光・レジャー目的で訪問する人の割合が非常に低い
■親族・知人訪問やビジネス目的で利用する割合が高い
●旅ナカ
■夜間よりも昼間の滞在者数が多い
■4月・7月・8月・10月の滞在者数が多い傾向にある
■夜間は川口市を、昼間は川越市を利用する人が多い
※本記事では「旅マエ」「旅ナカ」に焦点を絞り分析を行なっています
使用データについて
モバイル空間統計とは、ドコモの携帯電話ネットワークの仕組みを使用して作成される人口統計情報。携帯電話ネットワークは電話やメールなどをいつでもどこでもご利用いただけるように、各基地局のエリア毎に所在する携帯電話を周期的に把握しているサービス。いつ・どんな人が・どこから・どこへを7,600万(訪日外国人:750万)サンプルから分析可能。
※当レポートでは、主要17ヶ国(大韓民国、中華人民共和国、台湾、香港、ベトナム、タイ、シンガポール、マレーシア、フィリピン、インド、英国、フランス、ドイツ、ロシア、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア)の訪日外国人の滞在データを使用
都道府県単位で、訪日外国人(地域別・国籍別)の部門別カード消費額や取引件数、取引単価をマップやグラフに表示して比較したり、消費額の推移をグラフに表示することで、自地域における訪日外国人の消費額や消費単価を把握可能。
訪日外国人旅行者の消費動向を明らかにし、外国人観光客誘致に関する施策の企画立案、評価等のための基礎資料を得ることを目的とした観光庁が実施している調査です。 本調査は、目的に応じて以下の3つの調査を四半期毎に実施しています。 A全国調査:日本全体での訪日外国人の客層や旅行内容、消費実態を明らかにする。 B1地域調査:訪問地(都道府県)毎に、訪日外国人の客層や旅行内容、消費実態を明らかにする。 B2クルーズ調査:船舶観光上陸許可を得た訪日外国人の客層や旅行内容、消費実態を明らかにする。
Twitterや一部インスタグラムのデータを元にナイトレイが国籍判定や位置情報解析を行ったデータ(2016年9月20日~2017年8月31日のデータを集計)。SNS解析データを基にして、訪日外国人のクチコミ、周遊動向、人気施設等の把握が可能。
埼玉県の訪日外国人旅マエ動向
旅行手配の時期
全国平均と同じように「出発の1~2か月前」に旅行を手配する人が多いことがわかる。
埼玉県の特徴として、旅行直前の「出発の一週間以内」に手配する人が全国平均より多いことが挙げられる。
観光庁「訪日外国人消費動向調査」2017年
旅行申込方法
ウェブサイトから申し込む人が大半を占めることがわかる。
全国平均と比較すると、電話等その他の方法で申し込む人が多い。
旅行手配方法
埼玉県を訪れた外国人の約9割が個別手配で旅行を手配している。
出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査」2017年
旅行目的
「観光・レジャー」の割合が、全国平均の割合の約半分と圧倒的に低い。
一方で「親族・知人訪問」と「その他ビジネス」の割合が全国平均と比較して非常に高い。
出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査」2017年
埼玉県の訪日外国人旅ナカ動向
埼玉県の滞在状況
●年別滞在者数推移
出典:RESAS「モバイル空間統計」※2015年1月から2017年11月までのデータを集計
●月別滞在者数推移
4月・7月・8月・10月に滞在者数が他月と比較して多い傾向にあるが、年間を通して大きな違いは見られない。
出典:RESAS「モバイル空間統計」※2015年1月から2017年11月までのデータを集計
●訪日回数
初めて埼玉県を訪れる外国人が多いが、全国平均と比較するとその値は低い。
また「10~19回目」と「20回以上」の人が多いことも特徴的である。
出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査」2017年
●国籍別滞在者割合
昼夜ともに、中国からの滞在者数が圧倒的に多い。
また、昼間の台湾からの滞在者数は13.4%なのに対し、夜間の台湾からの滞在者数は8.1%まで低下しているのが特徴的である。
中国人のインバウンド観光情報については「インバウンド担当者必見!データから分かる訪日中国人の特徴」を参照
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出典:RESAS「モバイル空間統計」※2016年12月から2017年11月までのデータを集計
埼玉県で訪日外国人の滞在者数が多い市区町村トップ3
●1位:川口市
他の市区町村と比較すると、夜間の滞在者数が非常に多いことが特徴的である。
近年、川口市では中国人やフィリピン人、ベトナム人らの集住が進んでいるため、市内に住む親族や知人を訪問する外国人が多いと考えられる。
出典:RESAS「モバイル空間統計」※2016年12月から2017年11月までのデータを集計
●2位:川越市
昼間の滞在者数が夜間の滞在者数よりも圧倒的に多いことが特徴的である。
小江戸として有名な川越は首都圏から1時間程度で行くことができ、外国人からも人気がある観光スポットであるため、昼間の滞在者数が多いと考えられる。
出典:RESAS「モバイル空間統計」※2016年12月から2017年11月までのデータを集計
●3位:さいたま市大宮区
川越市と同じく、昼間の滞在者数が夜間の滞在者数よりも多い。
また、8月と4月の訪日外国人が非常に多いことがわかる。大宮区は東京からのアクセスも良いため、滞在者数が県内でも多いと考えられる。
出典:RESAS「モバイル空間統計」※2016年12月から2017年11月までのデータを集計
●埼玉県の市区町村別滞在者数ランキング
川口市と川越市のそれぞれの滞在合計値は、3位のさいたま市大宮区より10万人以上多い。
川口市の夜間滞在者数は、2位の川越市の倍以上の値を示しており、いかに夜間滞在者が多いかが分かる。一方で昼間滞在者数のみを見ると川越市が川口市よりも多い値を示していることが分かる。
出典:RESAS「モバイル空間統計」※2016年12月から2017年11月までのデータを集計
●埼玉県の人気施設ランキング
ナイトレイが独自に解析するSNSデータを元に作成した⼈気施設ランキングです。
「inbound insight SNS解析プラン」では人気施設ランキングだけでなく、訪日外国人の訪問スポット、クチコミ、周遊ルートを可視化することが可能です。
順位 | 施設名 | 市区町村 |
---|---|---|
1位 |
さいたまスーパーアリーナ |
さいたま市 中央区 |
2位 |
川口市役所 |
川口市 |
3位 | 春日部市 | 春日部市 |
4位 |
時の鐘 |
川越市 |
5位 | 川越氷川神社 | 川越市 |
6位 | 南鳩ヶ谷駅 | 川口市 |
7位 | さいたま新都心駅 | さいたま市 中央区 |
8位 | 川越プリン | 川越市 |
9位 | 大宮駅 | さいたま市 大宮区 |
10位 | 川越鐘つき通り店 | 川越市 |
出典:inbound insight「SNS解析プラン」 集計対象期間:2018年12月07日 ~ 2019年01月06日
埼玉県の消費状況
●埼玉県の総消費額、都道府県ランキング
訪日外国人の埼玉県での消費額は全国16位で、関東圏内では4位の値である。
2016年までは総消費額が年々増加していたが、前年比を見ると伸びは穏やかになっていることがわかる。
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出典:RESAS「ビザ・ワールドワイド・ジャパン株式会社のカードデータを再編加工」※ランキングは2016年10月から2017年9月までのデータを集計
購入店舗
全国平均でも上位にランキングしている「コンビニエンスストア」や「スーパーマーケット」「空港の免税店」などで購入する訪日外国人が多いことがわかる。
また全国平均を下回る項目が多く「100円ショップ」と「スーパーマーケット」のみが全国平均を大きく上回っているのが特徴的である。
出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査」2017年
利用金融機関
「ATM」を利用する訪日外国人が圧倒的に多いことが特徴的である。
全国平均と比較すると「銀行・郵便局」の利用割合も多いことがわかる。
出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査」2017年
支払い・決済方法
「現金」と「クレジットカード」が高い割合を示している。
「交通系ICカード(Suica等)」については全国平均を上回る値を示している。
出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査」2017年
世帯年収
全国平均とほとんど変わらないものの「500万円未満」は全国平均をやや上回っていることから、比較的に低所得層の訪日が多いと考えられる。
出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査」2017年